大判例

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東京高等裁判所 昭和58年(行ケ)213号 判決

(争いのない事実)

一 本件に関する特許庁における手続の経緯、本件発明の要旨及び本件審決理由の要点並びに参加人が脱退原告から本件特許権を譲り受けた経緯が参加人主張のとおりであることは、本件当事者間に争いのないところである。

(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二 参加人は、本件審決は本件発明と引用例記載の発明とが発明の課題及び作用効果を異にする点を看過して、誤つた結論を導いたものである旨主張するが、次に説示するとおり、本件審決の認定判断は正当であり、参加人の主張は、理由がないものというべきである。

前記本件発明の要旨及び成立に争いのない甲第二号証(本件特許公報)によれば、本件発明は、信号灯用ポールに関するものであるところ、従来の信号灯用ポールは、コンクリート製のものが主流であるが、コンクリート製のものは、強度上径を太くしたり、中空のものでも厚みがあるので、その内部に電線を通すことができなかつたため、信号灯の電力線や制御用電線がポールの外側に表出し、ポールの外観を損ねるのみならず、電線の保護及び支持を厳重に行う必要があつたし、また、信号灯その他の機器のポールヘの付設には多数の取付けバンドを使用するために、取付けバンドの金具で通行人の衣服を裂傷することも少なくなく、これらの対策が待たれていたところから、このような従来の問題を解決し、外観も良く、配線も、機器の取付けも、従来のような取付けバンドを必要としない信号灯用ポールを提供することを課題として、本件発明の要旨(特許請求の範囲の記載と同じ。)のとおりの構成を採用し、これにより、本件審決の認定のとおりの作用効果を奏するものであること(本件発明が叙上の作用効果を奏する点は、参加人の認めるところである。)が認められる。

他方、成立に争いのない甲第三号証(引用例)によれば、引用例は、本件発明の特許出願の日の前である昭和五〇年二月二五日電気通信協会発行の日本電信電話公社施設局編「設計エンジニア必携 増設宅内編」第九六頁ないし第九九頁であつて、それには、本件審決の認定のとおりのポール電話用ポール構造図が記載されている(引用例の叙上記載内容は、参加人の認めるところである。)ことが認められ、右引用例記載のポール電話用ポールを本件発明と対比すると、引用例記載のポール電話用ポールの一二五Aガス管は本件発明の鋼管中空ポール1に、二五A薄鋼電線管(通信線用)は遮蔽用管2に、通信線は信号灯制御用電線3に、電灯線は信号灯用電力線4にそれぞれ対応することが認められるから、本件発明と引用例記載の発明とは、前者が信号灯用ポールであるのに対し、後者が電話用ポールである点で相違するほかは、技術的構成を同一にするものというべきであり、そして、右の相違点については、前掲甲第二号証(本件特許公報)によれば、市街地の信号器を制御する電線としては、電話線が使用されていることが認められる(本件特許公報第一頁第二欄第一〇行ないし第一三行)から、引用例記載のポール電話用ポールに配設されている通信線、すなわち電話線を本件発明の信号灯制御用電線4として使用し、電話用ポールを信号灯用ポールとすることは、当業者において容易に想到し得ることというべきであり、したがつて、引用例には、本件発明の構成を示唆し、かつ、本件発明の作用効果を予測せしめるに十分な技術的思想の開示があるものと認めるのが相当である。参加人は、引用例には、単に電線の地中からの立上り(取出し)のための現場施工の技術のみが記載されているにすぎず、本件発明が解決課題及び解決手段とした技術的思想は何ら開示されていない旨主張するので、検討するに、前掲甲第三号証(引用例)によれば、引用例記載のポール電話用ポール構造図は、地下ケーブル用のポールを図解したものであり、地中からの立上り部分の施工技術を説明したものである(この点は、被告も認めるところである。)から、解決課題について明記するところはないが、引用例には、単に参加人が主張するような施工技術のみが示されているものではなく、前認定のとおり、本件発明の信号灯用ポールの構成及び技術的思想を示唆するに十分なポール自体の構成が明示されているものであり、したがつて、参加人の右主張は、採用することができない。また、参加人は、引用例記載のポール電話用ポールの二五A薄鋼電線管(通信線用)は、本件発明の遮蔽用管2のような遮蔽効果を意図したものではない旨主張するところ、引用例には、右の二五A薄鋼電線管(通信線用)が遮蔽効果を有する旨の記載はないが、前掲甲第二号証(本件特許公報)によれば、本件発明の信号器の制御の伝送線として使用される電話線が取り扱う信号は、弱電の類に属し、これと信号器点灯用の一〇〇Vの電力線とを近接して配線することは、電話線に対して悪影響を与えることになるため、これを遮蔽用の管内に配設してその影響を無くす必要があることが認められる(本件特許公報第一頁第二欄第一〇行ないし第一七行)ところ、前認定の引用例記載のポール電話用ポールの一二五Aガス管においても、通信線(電話線)が電灯線に近接して配設されているのであるから、通信線(電話線)に対する悪影響を無くす必要があつて、二五A薄鋼電線管(通信線用)を遮蔽効果を意図して使用しているものと認めることができ、したがつて、参加人の右主張も、採用の限りでない。なお、参加人は、本件発明の信号灯用ポールが現に西日本一帯にわたり県公安委員会によつて採用されていることは、本件発明に顕著な作用効果があることの証左である旨主張するが、引用例には、本件発明の作用効果を予測せしめるに十分な技術的思想の開示があることは、前説示のとおりであり、したがつて、参加人の右主張も、採用するに由ない。

(結語)

三 以上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法のあることを理由に本件審決の取消しを求める参加人の本訴請求は、理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却することとする。

〔編註その一〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

鋼管中空ポール1の内部に更に遮蔽用管2を挿通し、同遮蔽用管の内部に信号灯制御用電線3を配設し、その外側であつて鋼管中空ポール1の内部に信号灯用電力線4を配設してなる信号灯用ポール。(別紙図面(一)参照)

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

別紙図面(一)

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